【解説と設問を発表】福島原発、このミッションは遂行可能か?【Global Newsについて語ろう!】第31回 9/4(土)10時@オンライン
【ワークショップ】
ワークショップは昨年末に発表された以下のThe Japan Times紙の記事を利用します。この記事は「The Japan Times ニュースで深堀り英語vol.3」の84頁に日本語訳とともに転載されています。
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解説
福島原発の廃炉と原子力発電の未来について、福島原発10周年を機に多くの専門家が意見記事をメディアや学術誌に発表しています。英国のNature誌は以下の短い論考を掲載しています。
Nuclear energy, ten years after Fukushima
“Amid the urgent need to decarbonize, the industry that delivers one-tenth of global electricity must consult the public on reactor research, design, regulation, location and waste.”
記事のタイトルの下のリード文が示すように、脱炭素社会を目指す中で現在原子力発電は世界で10%のエネルギー需要を賄っています。しかし、原子力発電の運営の継続にはリスクと費用がかかります。スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ事故、福島原発事故と.原発の安全性や環境への影響は多大で市民の不安を軽減するためには研究、デザイン、規制、立地、廃棄物などに関して市民との対話が欠かせません。
しかし、原子力発電にかかわる関係者は非常に内向きで、技術や政策決定に関して不可欠な上記の重要事項の情報公開に関しては極めて消極的であり、これが原子力発電にかかわる最大の問題であると記事は分析しています。従って、原子力エネルギーの未来に関して重要なことは二つだとNature記事の著者は訴えます。第一に市民の反対を乗り越えることが出来るか、第二に原子力発電の便益がそれがもたらすリスク・費用と環境への負荷を上回っているか、だといいます。
”In our view, a larger problem looms: the opaque, inward-looking and inequitable ways in which the nuclear sector has long made technology and policy decisions. Hence, two crucial questions concerning the future of nuclear energy need to be asked. First, can and will the sector ever overcome public disapproval? Second, are its benefits worth the risks and costs to people and the environment?”
Nikkei Asiaの記事が福島原発の廃炉に関する問題点を詳しく報じています。
原子力の未来は、運用を続けるにしても、廃炉するにしても、市民からその運用に関して信頼を得ること、そして特に原発が立地する近隣住民との対話が欠かせない条件だというのが専門家の間での共通の理解です。いわゆるコロナ禍の現在でも問題になっている「科学コミュニュケーション」が問題解決のカギのようです。
現代社会に強く求められる科学コミュニケーション
以下、記事の著者は福島原発の後に出された「科学コミュニュケーション」の問題について以下のように述べています。
「震災は多くの問いを投げかけました。例えば、専門領域に閉じたこれまでの研究界のあり方を振り返り、リーダー人材には、総合的判断を社会に発信するコミュニケーション能力が必要であるとの指摘も出されました。また、日ごろから個々の科学技術についての知識を得るだけでなく、そもそも科学技術とはどういうものなのか、科学技術の限界はどこなのかを専門家と社会の間、さらに、異分野の専門家との間で共有する必要があるとの見解も出されました」
その中で新たに「科学コミュニュケーション」の専門家という職業も現れ始めています。以下は博士号を取得した後に、科学コミュニュケーターとして働き始めた科学者の体験談です。
また、「科学コミュニュケーション」におけるメディアの役割も重要です。ジャーナリストのMartin Fackler氏は以下の論考を学術誌に寄稿しています。
Media Coverage of Fukushima, Ten Years Later / Martin Fackler
以下、論考の要約の冒頭の部分です。
"When taking up the unlearned lessons of Fukushima, one of the biggest may have been the need for more robust oversight of the nuclear industry. In Japan, the failure of the major national news media to scrutinize the industry and hold it accountable was particularly glaring. "
論考の結論部分で、Fackler氏は日本のメディアのコロナ報道に対して、「原発報道と同じ過ちを犯している」と手厳しい批判をしています。
”All too often, coverage of COVID-19 ended up repeating the pattern that we saw in Fukushima. The media once again surrendered their biggest public asset: their power to challenge the official narrative and expose the facts that officials don’t want us to know. Instead, the major domestic media once again show themselves more interested in preserving their privileged insider status. By doing so, they once again do a disservice of their readers.”
福島原発の処理は非常に困難な問題ですが、これ以上先送りをするのも未来の世代に禍根を残すことになりそうです。この問題を一緒に考えてみませんか?このワークショップの設問はサロン会員、記事購入者、ワークショップ参加者に送付します。
ワークショップの詳細は以下のnote記事でご確認ください。