【解説と設問を発表】アフガニスタンと9.11: 米国の対テロ戦争の20年【Global Newsについて語ろう!】第34回 9/25(土)10時@オンライン
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【ワークショップ】
ワークショップの詳細は前回のnote記事でご確認ください。
ワークショップは2021年8月26日に発表された以下のAFP通信社のデジタル版英語記事を利用します。
'Total failure': The war on terror 20 years on
この記事は日本語に翻訳されて発表されいます。
「完全な失敗」 9.11から20年、対テロ戦争が残したもの
【9月9日 AFP】米同時多発攻撃が起きた2001年、当時のジョージ・W・ブッシュ(George W Bush)米大統領は「テロとの戦い」を宣言した。
【解説】
9.11攻撃後に始まり、結果的に20年にも渡った米国のアフガニスタン駐留。しかし、米国は同国からテロを一掃し、平和を構築するどころか、排除したはずの武装派勢力タリバンに統治権を奪われ、米国とアフガンの復興に協力した同盟国の関係者やアフガン人を同国に残したまま、命からがらの撤退となりました。上記のAFPの記事が米国が仕掛けた「対テロ戦争」の顛末を次のように伝えています。
上級研究員は、「設定された目標は達成不可能なものだった。テロリズムを打倒することなどできない。脅威は絶えず進化している」と話す。米ワシントンのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は2018年の報告書で、活動中のテロ組織の数を1980年以降で最多水準の67と推計。戦闘員の数は10万~23万人で、米同時多発攻撃が起きた2001年から270%増加したと指摘した。
9.11から20年が過ぎ、アルカイダやISなどの大規模なテロ組織や9.11並みの大掛かりなテロ事件は生まれにくくなったものの、インターネットやSNSをつうじて、イスラム過激派「ジハード」の思想は世界各国に広がりました。過激派組織は、先進国も含めた各地で地元の若者をリクルートしてフランチャイズ化し、ローカルなジハード組織が各国でテロを起こしています。かつては中東出身者が多かったテロ実行犯も、アフリカ、南アジア、東南アジア出身者が増えました。いわゆる移民による「homegrown terrorists」が中心です。そして、もちろん日本人も過激派テロの犠牲になっています。
2019年12月4日、アフガニスタンの東部で長年、同国の復興に貢献した中村哲医師がテロのため殺害されたことは記憶に新しいと思います。また、2016年にはバングラデッシュのダッカで国際協力に係わっていた日本人7名もレストランを襲撃したテロ・グループに殺害されました。日本はアフリカ、中東、南アジア、東南アジアで植民地を築かなかったため、「日本人は欧米人に比べてテロのターゲットにはなりにくい」と思われていましたが、最近はその例外でもないようです。以下のNewsweekの記事はそれを伝えています。
テロがこれだけ、世界に拡散した理由は何でしょうか。9.11の後、ブッシュ政権時に始まった米国のイラク、リビアへの軍事攻撃、それに協力した同盟国への憎悪、インターネット・SNSの発達はその大きな要因です。しかし、戦争終結後、米軍やその同盟国がアフガニスタン、イラク等において、十分に復興に力を注がなかったことも事実です。
専門家によると、テロとの戦いでは軍事作戦に重きが置かれ、ジハード主義の温床となる戦争、混乱、劣悪なガバナンス(統治)、汚職については十分に考慮されなかった。
そして、何よりもhomegrown terroristsの台頭は移民先の国で十分に教育や就業の機会を与えられなかった個人的な怨みからテロに走ったケースが大半のようです。しかし、それだけでなく、日本のオウム真理教のテロ事件、ダッカのレストラン襲撃事件、2021年の米国議事堂襲撃事件など、比較的恵まれた家庭に生まれて高学歴であったり、あるいはその国の人種的多数派であっても「社会から疎外された」と感じ、狂信的指導者から唆されて国内でのテロに加担してしまう人間も少なくありません。ほとんどは単独犯の犯行ですが、米国で頻発する銃乱射事件、日本での池田小児童殺傷事件、相模原障害者殺傷事件も犯行の動機は「ジハーディスト」とそう変わらないように思います。宗教的な動機はあくまで表向きの理由に過ぎないのでしょう。
国外でのテロ行為に対して、日本人は何をすべきか?ダッカ事件を分析したジャーナリストは以下のような解説をしています。
今回の事件について「日本人が標的にされた」ととらえるのではなく、バングラデシュの貧困をなくすために支援に来ていた善意の日本人が犠牲になったことで、過激な行動の不当性を、日本の立場から訴える必要がある。それによって、若者たちがISに参入し、テロに向かうことを押しとどめることができるはずだ。
以下は長年、BBCで安全保障の問題に取り組み、自身もテロの犠牲となって下半身不随となった記者の分析です。
2001年9月11日以降、テロリズムとの戦いにおいて、いくつか致命的なミスがあったと、BBCの安全保障問題担当、フランク・ガードナー編集委員が解説する。
以下は上記の記事の英語原文です。
Some fatal mistakes have undermined the fight against terror, says the BBC's Frank Gardner.
経済格差や貧困の問題だけでなく社会から疎外されたことでテロ行為にかかわってしまう人間もいる、というのが現代社会の現実です。あなたはこの問題をどう思いますか。一緒に考えてみませんか?このワークショップの設問はサロン会員、記事購入者、ワークショップ参加者に送付します。