[解説と設問を発表] 善と悪の経済学(4):100年後の社会を見据えて【英語で学ぶ未完の資本主義】第17回7/6(日)20時@オンライン
2024年9月から始まった講座&ワークショップ「英語で学ぶ未完の資本主義」。第17回はチェコの経済学者トーマス・セドラチェク「善と悪の経済学」での主張をもとに経済学と社会との関係性について英語で議論する第4回です。このワークショップの解説と設問を発表します。
2024年9月から始まった「英語で学ぶ未完の資本主義」に関するワークショップの2025年7月のお知らせです。2025年7月6日(日)夜20時@オンラインで開催するワークショップ第16回は書籍「英語で理解する未完の資本主義」内で、「善と悪の経済学」の著者トーマス・セドラチェク氏へのインタビューが掲載されている第4章の後半のセクション「精神科医の視点」「理想的な社会とは」(p108-115)を使い、英語で議論します。設問はこの記事の以下のセクションの内容も踏まえた形で設定しますので、書籍の購入がまだの方も、ぜひご参加ください。
善と悪の経済学(4):100年後の社会を見据えて【英語で学ぶ未完の資本主義】第17回7/6(日)20時@オンライン
異色の経済学者、トーマス・セドラチェクの著書を基にしたインタビューの第4回です。第4章の最後のセクションで、彼は大恐慌のさなか1930年にケインズが発表した「孫の世代の経済的可能性」(John Maynard Keynes, “Economic Possibilities for our Grandchildren”) に触れて、100年先を見据えた「理想的な社会」について論じています。
1929年のブラック・マンデーの翌年、著しい経済発展を遂げた19世紀が終わり、今後これ以上経済が成長する余地はない、といった悲観論が社会を覆う中、ケインズは「先進諸国の生活水準は100年後には1930年当時の4~8倍程度になり、人々は、1日に3時間の労働で生活に必要なものを得ることができるだろう」との予測を発表したのです。
John Maynard Keynes 1930
Economic Possibilities for our Grandchildren
https://www.marxists.org/reference/subject/economics/keynes/1930/our-grandchildren.htm
国際通貨基金(IMF)の専務理事、クリスタリナ・ゲオルギエバは。2024年3月14日にケンブリッジ大学キングス・カレッジで行った講演「私の孫たちの経済的可能性」で、ケインズが、100年後には、技術革新と資本蓄積によって、生活水準が最大8倍に向上する、とした予測は極めて正確だったと述べています。実際、世界人口は過去100年間で4倍になった一方、一人当たりの所得は8倍に達した、と説明しています。
私の孫たちの経済的可能性
クリスタリナ・ゲオルギエバ(IMF)
「1日に3時間の労働で生計を維持できる報酬を得ることができ、自分が望む仕事ができる」のが、「理想的な社会」だとセドラチェクもケインズと同じく考えているようです。しかし、残念ながら、この部分に関してはケインズの予測は当たりませんでした。
一方、ケインズの孫たちへの約束が過去100年間にどのように果たされたかを振り返ってみることは有益だ、とブルガリア出身のゲオルギエバ理事は主張します。まず、「生活水準の大幅な向上に加えて、前例のない規模で貧困を削減した」事実は注目に値すると次のように指摘しています。
「過去30年間だけでも、15億人の人々が貧困から抜け出し、数億人の人々が中産階級入りを果たした。また、平均寿命や乳児死亡率、識字率、教育水準の劇的な改善も忘れてはならない。女子に関しては特に言えることである」
しかし、課題は成長の果実の分配が先進国では1970年以降停滞していること、並びに先進国の所得水準に追いつけない発展途上国も多く、経済格差が拡大していることです。世界では、いまだに7億8,000万人以上が飢餓に直面おり、世界の富の約4分の3は、人口のわずか10分の1に集中していると、ゲオルギエバ理事は説明しています。
「経済的格差が大きいと、公的機関や企業、個人同士のソーシャル・キャピタルと信頼が損なわれる。また、国家間の信頼も低下している。地政学的な緊張によって、世界経済が競合するブロックに分断化し、世界がより貧しく、より安全でない場になる恐れがある。悲惨なことに、かつてないほど協力が重要なときにこうしたことが起きている。気候変動を筆頭に、一国だけでは解決できない国境を越えた問題に取り組むために、これまで以上に協力が必要なときにである」
このような時代に経済学に求められるものは何でしょうか。これらの批判は、セドラチェクの著書「善と悪の経済学」「続・善と悪の経済学 資本主義の精神分析」とも共通点があります。
善と悪の経済学
https://str.toyokeizai.net/books/9784492314579/
続・善と悪の経済学 資本主義の精神分析
https://str.toyokeizai.net/books/9784492315064/
あなたはこの「経済学、資本主義と社会」の関係性についてどう思いますか?一緒に考えてみましょう。
日時: 2025年7月6日(日)20時~21時30分
場所: オンライン
定員: 10名程度まで
費用: 見学のみ: 500円、初回参加者:800円~
【チケット】
チケットの申し込みは以下のYahooチケットサイトから、または銀行振り込みでお願いします。
善と悪の経済学(4):100年後の社会を見据えて【英語で学ぶ未完の資本主義】第17回7/6(日)20時@オンライン
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/011mi56mqhi41.html
[注意]
なお、Yahoo Ticketでのチケット購入については、YahooIDが必要になりました。未登録の場合、SMSでの本人認証が求められる場合もあるようです。
チケット購入・販売におけるゲスト購入・クレジットカード決済の変更について - PassMarket
https://blog-passmarket.yahoo.co.jp/archives/wallet_20240409.html
SMSによる本人認証について - PassMarket Blog
https://blog-passmarket.yahoo.co.jp/archives/sms.html
【銀行振込での申し込み】
振込用紙は以下のサイトからダウンロードお願いいたします。
https://www.global-agenda-21c.com/contact
このワークショップの設問は参加申し込み者、サロン会員、有料ニュースレター購読者及び後日発表するnote記事購入者にのみ送付します。過去の【英語で学ぶ大人の社会科】ワークショップと同様の設問を設定しますので、以下のマガジンの2020年4&5月の記事(設問を公開しています)を参考にしてください。
【英語で学ぶ大人の社会科】世界の知性が語る現代社会
https://note.com/globalagenda/m/mb6e6207ceae6
このワークショップに関心のある方は以下のニュースレター@Substackに登録していただくと案内が届きます。
【英語で学ぶ現代社会】を無料ニュースレター@Substackで購読しませんか?
https://globala.substack.com/subscribe
【未完の資本主義】
2019年に出版されたインタビュー集『未完の資本主義』。その特徴は、現代社会で「知の巨人」たちと呼ばれる気鋭の識者7人に、「テクノロジー」と「経済」の観点から今後の資本主義の行く末について尋ねる内容となっています。
未完の資本主義:テクノロジーが変える経済の形と未来https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84372-8
今回新たに、この書籍の英語版の内容と関連記事について月2回のペースでワークショップを開催していく予定です。以下、それらの識者のラインナップです。
◆ポール・クルーグマン(ノーベル賞経済学者)――我々は大きな分岐点の前に立っている
◆トーマス・フリードマン(『フラット化する世界』著者・NYタイムズコラムニスト)――「雇用の完新世」が終わり「人新世」がはじまる
◆デヴィッド・グレーバー(文化人類学者・ウォール街占拠運動の理論的指導者)――職業の半分がなくなり、「どうでもいい仕事」が急増する
◆トーマス・セドラチェク(『善と悪の経済学』著者・チェコ共和国経済学者)――成長を追い求める経済学が世界を破壊する
◆タイラー・コーエン(ジョージメイソン大学教授・経済学者)――テクノロジーは働く人の格差をますます広げていく
◆ルトガー・ブレグマン(ジャーナリスト・歴史家)――ベーシックインカムと1日3時間労働が社会を救う
◆V・M=ショーンベルガ―(オックスフォード大学教授・ビッグデータの第一人者)――「データ資本主義」が激変させる未来
英語版の書籍はこちらです。
英語で理解する未完の資本主義
https://book.alc.co.jp/book/b10029862.html
「インタビューの英語書き起こし」「日本語訳」「用語解説」「7人のインタビュー音声」をまとめた、「英語を学びながら、英語で学べる」1冊です。英語を使って勉学・仕事をしたり、最先端の知に関心のある人におすすめの内容です。
【解説】
セドラチェクは「精神科医の視点」のセクションで「数字で表せる物事しか見ていない」という現代の主流経済学の問題点を指摘しています。そのような観点から言えば、数値化が困難にもかかわらず、現代の経済において最も注目を集めている理論がゲオルギエバIMF理事が言及している「社会資本(ソーシャル・キャピタル:social capital)」でしょう。セドラチェクの主張もこの視点を取り入れれば、「経済学」の理論として理解可能です。
ソーシャルキャピタルは、いまでは経済学で重要な研究テーマとなっている、とされていますが、数字での算出が非常に難しい概念ですから、経済学では、ゲーム理論により「信用のメカニズム」を説明することに使われたりする場合が多いようです。
経済学におけるソーシャルキャピタル理論とは
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/10455
ここから先の情報、設問はイベントへの申込者、サロン/メンバー/有料ニュースレター会員、note記事購入者に公開します。
[解説と設問を発表]善と悪の経済学(4):100年後の社会を見据えて【英語で学ぶ未完の資本主義】第17回7/6(日)20時@オンライン|Global Agenda https://note.com/globalagenda/n/n5df3f4122560?sub_rt=share_pb